鷲崎弘宜、本田澄、深澤良彰、”不確定性と時間変化を含む一般化信頼性モデル”、メトリクス公団、Vol.1、TEF東海メトリクス勉強会、2013.
概要
昨今、開発において様々な課題があげられている。ソフトウェア開発において開発の見積もりや工数の予測については、経験や勘といった属人的要素をもって判断材料とすることがほとんどである。また、比較的早期な開発や、人員の不足が蔓延しており、開発の終了をどのようにして決定していいかどうか、明確な基準がない。
従来の研究において、こうした課題に対していくつかの提案がなされてきた。一つは、どれだけの規模のソフトウェアになるか見積もることである。過去の開発実績に基づき新たに開発するソフトウェアに対して、工数やLOCを見積もる、デルファイ法やCOCOMOなどが挙げられる。もう一つは、開発する規模に応じてどれだけの欠陥を発見すれば開発を終了とみなせるかどうかを予測することである。この、欠陥の予測については様々な手法が提案されている。特にソフトウェア信頼性モデルが有名である。
ソフトウェア信頼性モデルでは、実際の開発から得られた発見された欠陥数と時間の関係を統計的に解析するモデルとして、ゴンペルツ曲線モデルやロジスティック曲線モデルが用いられる。この方法は実際のデータに対して近似曲線へのあてはめを行うものであり、欠陥の発見に根拠を考慮したものではない。本稿では、欠陥の発見に確率的原因を根拠とし,考慮し確率モデルを用いた、非同次ポアソン過程(non-homogeneous Poisson process:以下、NHPPと省略する)モデルについて説明を行い、我々が提案するモデルと比較を行う。
従来の信頼性モデルでは開発における時間変化や不確定性を十分に考慮することができないため,我々は開発における時間変化と不確定性を考慮した新しいモデルを提案する。この2つを考慮したモデルを用いることで、開発期間をより精度よく予測できるようになり、事前に精度よく見積もることが可能となる。